剣道で絶対王者が負ける理由

負けた人 剣道

 

こんにちは。

私は剣道ブロガーのKENDO KAWANOと申します。

脱サラして剣道ブロガー兼YouTuber(現在準備中)に転身しました。

詳しくはプロフィールをご覧ください。

 

 

今回は、

「剣道で絶対王者が負ける理由

について、取り上げていきます。

 

 

剣道具職人のいる店 剣道防具工房「源」

 

剣道で絶対王者が負ける理由

 かつて「全日本選手権大会で連覇することは不可能である」と言われたほど、剣道で常勝ということは難しいことでした。しかしながら、昨今では全日本選手権大会でも連覇を達成する選手は出てきましたし、高等学校のインターハイなどでも何年も連続で優勝するようなチームも現れました。しかし、そんな絶対王者でも必ず負けるときが訪れます。今回はその理由について解説します。

 ポイントは以下の2つです。

 ・画一化が常勝を生み、そして壊す

  ・競技性の低年齢化が高校剣道界の混沌を生んでいる

 順に解説します。

 

画一化が常勝を生み、そして壊す

 「剣道の画一化」、これは時代と共に進んできたと言ってよいのではないでしょうか。理由はおそらく、「指導者の質の向上」にあると思います。

 これはあくまでも「競技上(試合上)の質の向上」のことで、例えばサッカーや野球でも時代が進めば進むほど戦術が新しくなっていくことと同じです。野球ではかつて、アッパースイングはよくない(つまりフライを打ち上げるような打ち方はよくない)と言われていましたが、アメリカのメジャーリーグでは昨今フライボール革命といわれ、ゴロよりもフライを打つことで打率や長打率があがるという理論が席捲しています。剣道においても数十年前の高校生の試合と、現在の高校生の試合を見れば戦術的な違いは一目瞭然です

 この例のように、他のスポーツでも起こっている変化(レベルアップ)が剣道の戦術や理論(試合における)においても起こっています。そしてそれは、おそらく主に中学校や高校の指導者によって研究され磨きがかけられてきたと言えるのです。

 そして今の時代ですから、そういった競技上の「新しい戦術」が瞬く間に全国に広がっていきます。つまりそこで「画一化」の現象が起こっていると言えるのではないでしょうか。

 「画一化」の進行は逆に言えば、「特異な存在」の絶滅に他なりません。悪く言えば「皆同じ」ようなことをやっているということになります。その中で、特に鍛錬を積んだ者(より勝つための戦術に特化したものと書いた方がわかりやすいかもしれません)が試合に勝つということで、ある意味では連続して勝つということもあり得る環境にはなってきたのではないでしょうか。

 なるべく誤解のないようにと、まわりくどい言い方になっていますが、要するに「ゲームの攻略法」を見つけて徹底的に実行できる人物が試合に勝てるようになってきた時代が現代と言ってよいと思います。

 では、なぜ絶対王者が敗れるかと言えば、「新しい戦術」は次々と生まれるからです。絶対王者を倒すための「新しい攻略法」が日々考案され、挑戦者たちは鍛え上げているのです。

 故に、現代の「画一化」の進行によって、全日本選手権大会やインターハイで連覇をするような選手やチームが現れやすい環境になってきているが、逆に「画一化」によって絶対王者を倒すチームが現れることにもつながるということになります。そういう意味で「画一化」は絶対王者を生み出し、そして壊しているということになるのです。

 

競技性の低年齢化が高校剣道界の混沌を生んでいる

 絶対王者が敗れるもう一つの理由として、「競技性の低年齢化」が挙げられます。

 高校剣道界を見てみましょう。

 平成の高校剣道界の盟主は?と聞かれれば、PL学園高校や高千穂高校、桐蔭学園高校なども候補に挙がると思いますが、私はやはり九州学院高校だと考えています。やはり近年のインターハイや玉竜旗大会や全国選抜大会を何連覇もしたという偉業は他をもって語ることができません。

 しかしそんな九州学院高校でさえ、永遠ではありません。現に連覇は途絶えています。もちろん冒頭に述べたように、剣道で勝ち続けるということは至難の業です。が、5連覇はできても6連覇はできないのか?6連覇はできても7連覇はできないのか?といったところに疑問は残ります。

 私はその原因として一つの仮説を立てました。

 それは、「現在の剣道界における競技性の低年齢化が混沌を生んでいる」という仮説です。

 時代ではインターネットの発達により全国で行われている試合や稽古の動画をリアルタイムで閲覧することができるという環境が整備されています。それにより、良くも悪くも向上心をもった子どもは高校生や大学生、大人の強い選手の動画を見て真似をします。そして今の小学生の剣道の技術は驚くほど高くなっているのです。現に小学生の試合の審判をしたり、動画で全国大会などを見たりしていると、自分が小学生の頃と比べて雲泥の差があるなと正直に感じます。わかりやすく言えば、小学生が高校生や大学生の剣道をやっているようなものです。それは何を意味するのかと言えば、ひとつは先ほどの項で書いた「画一化」を助長します。当たり前ですが、見本を見ながら真似をするわけですから、皆同じようなスタイルになっていくことは必然であると言えます。そしてもう一つは、関連になりますが「飛びぬけた才能」が失われるという意味をもっているような気がしてなりません。皆同じようなスタイルで戦うことを意識するあまり、総合点では高得点だが部分的に飛びぬけている技を持つということがなくなってきている気がします。私はそこにこそ、絶対王者が敗れる原因が潜んでいると思っています。

 例えば、面80点・小手80点・胴80点の選手と、面78点・小手80点・胴78点の選手が対戦すれば、理論上前者が勝つことになるのですが、差は面と胴合わせてもたったの4点しかないのです。これが現在の状況だと私は考えています。似通ったスタイルの画一的な選手だからこそ、差が少ない。全国で1位の選手と2位の選手と、ベスト8の選手の力の差はそれほど大きくないのが現在の剣道界だと言えるでしょう。故に、少しの差で試合の結果が変わりえる、つまり絶対王者が敗れる条件がそろっているのです。

 逆に、面120点・小手80点・胴80点の選手と、面80点・小手80点・胴80点の選手が対戦すれば当然前者が勝つでしょう。では半年後はどうなるでしょう?来年はどうなるでしょう?おそらく結果は同じだと考えられます。なぜなら、飛びぬけているからです。私はつい最近までの剣道界は、こういった状態だったと考えています。この場合、全国で1位の選手と、2位の選手と、ベスト8の選手では力の差が歴然としているはずです。よって、勧誘によって全国で上位の選手を一つの高校に集めることができれば、かなりの確度で日本一を勝ち取ることができるでしょう(もちろん監督さんにそれに見合った指導力があることが前提ですし、情報化がここまで進んでいない時代は今ほど全国各地に越境して剣道留学をするというケースは少なかったと考えていますのでそういう意味では昔は昔で絶対王者的なチームを作ることは困難だったと思います)。その代表が近年の九州学院高校の躍進ともいえるのではないでしょうか(連覇をしていた頃の九州学院高校の場合は画一化と飛びぬけた才能のミックスのような気がしていますが…)。

 このように私の仮説によれば、現代の剣道界は「競技性の低年齢化によって飛びぬけた選手が枯渇してきており、それによって上位層の実力差が縮まった。結果として、剣道界(今の時点では高校剣道界まで)は混沌の時代へと突入していった」ということになります。

 

まとめ

 今回は、

 剣道で絶対王者が負ける理由

 について解説しました。 

 ポイントは、画一化が常勝を生み、そして壊す」「競技性の低年齢化が高校剣道界の混沌を生んでいるとなります 

 昔読んだ藤原正彦さん著「国家の品格」の中で「天才を生むためには必要な土壌がある」というようなことが書かれてあった気がします(興味のある方は下にAmazonのリンクを貼っておきますのでご覧ください)。剣道界には歴史上、天才剣士と言われた名剣士が多数存在します。今の若い世代でもそう目されている選手はいます。しかしながらこれが、現在の小学生中学生高校生の年代にも「天才」を永続的に輩出できるという保証にはなりません。この問題には剣道人口も大いに関わってくることと思いますが、剣道界には「飛びぬけた才能」つまり「天才」が誕生する土壌を守っていってもらいたいと個人的には思っています。

 最後まで読んでいただきありがとうございます。次回もお楽しみに。 

 それでは。 

 

国家の品格 (新潮新書)

新品価格
¥734から
(2020/6/24 21:59時点)

 

剣道具職人のいる店 剣道防具工房「源」

剣道
スポンサーリンク
シェアする
kendokawanoをフォローする
KENDO KAWANO(ケンドーカワノ)ブログ

コメント

タイトルとURLをコピーしました