こんにちは。
私は剣道ブロガーのKENDO KAWANOと申します。
脱サラして剣道ブロガー兼Youtuber(現在準備中)に転身しました。
詳しくはプロフィールをご覧ください。
今回は、
「剣道の審判で有効打突を正しく判定する方法」
について、取り上げていきます。
今回の記事は、以前の剣道で不信感を抱かれる審判とは? 基本中の基本!で書いた内容と併せて読んでいただけると、剣道講習会並に有益な記事となっております。審判に対して少しでも不安感や疑問を持っている方は是非ご覧ください。
剣道の審判で有効打突を正しく判定する方法
剣道の審判をする際に、有効打突を正しく判定する方法は、以下の2つです。
①正しい位置取りをする
②有効打突の条件を理解する
それでは、順を追って説明しましょう。
正しい位置取りをする
剣道の審判は、「主審を頂点とした二等辺三角形」が基本の隊形になります。
主審が試合者の中心に位置取りをすることになるので、副審は主審の位置を確認しつつ、二等辺三角形が崩れないように前後左右へ移動を繰り返します。
試合者は、試合中に縦横無尽に試合場の中を動きますので、審判はその度に位置取りを修正していくことが求められます。
位置取りに関して、注意事項が3点あります。
①試合者が3名の審判の外側に出ないようにする
二等辺三角形の形ばかりに気を取られるのではなく、試合者と審判の位置関係もきちんと把握しておかなければなりません。3名の審判の二等辺三角形の線上から外側に、試合者が出てしまいそうな場合は、隊形が崩れてでも位置取りを修正して、出ないようにするべきです。試合者が、線上から外側に出るという事は、有効打突や反則の判定に著しく支障をきたす可能性があるからです。
もしも、完全に出てしまったという場合は、直ちに「止め」をかけて試合を中断してください。
②例外的に「主審を頂点とした二等辺三角形が崩れる」時がある
特に、試合者が試合場の四隅付近で攻防をしているような場合に、試合者の向きが副審から見て縦に並ぶようになる場合があります。そのような場合には、試合者が滞在している四隅の方角から内側の副審が主審の方へ近寄って位置取りをします。
そうすることで、主審と副審の位置が逆転するような現象を防ぐことができます。そのような場合は、一時的にですが、主審を頂点とした二等辺三角形が崩れることになります。
その後、試合者の動きを見つつ、正常の隊形に戻ってください。
③副審が反対方向に移動する際、大回りしない
試合中に、試合者が大きく移動して、片方の副審が反対側に大きく移動しなければならないことがあります。その際、円を描くように大回りで移動してはいけません。その無駄な動きが有効打突の判定やや反則の判断を間違えさせる要因になる可能性があるからです。
大きく移動する際は、なるべく直線的に、多少試合者との距離が近くなってもかまいませんので最短距離を移動(これを切り込むと言います)するように心がけてください。
以上の3つが位置取りにおける注意事項です。有効打突の判定はやはり、まず「見る」ことが大前提ですから、「見過ごし」「見落とし」がないように正しい位置取りを心がけましょう。
有効打突の条件を理解する
有効打突の条件は、全日本剣道連盟の定める、「剣道試合・審判規則」に以下のように定められています。
第12条 有効打突は、充実した気勢、適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるものとする。
上の条文は、剣道をする人なら一度は見たことがあるものですよね。
バラバラに分解して注意事項をあげていきます。
①充実した気勢
これは言うまでもなく、「気迫」のことです。そして通常「気迫」=「声」で間違いありません。
八段の先生方などは、必ずしも「気迫」=「声」ではありませんが、この記事を見ている方はまさか八段戦の審判員の方ではないでしょうから(見ていただければうれしいことこの上なしですが、先生方には無意味かと笑)
つまりは、「気迫」がなければ有効打突にならないということです。
②適正な姿勢
もちろん、読んで字のごとく、「姿勢が崩れていないか」という項目ですが、どのような場合に特に注意して見るべきでしょうか?
それは、姿勢が崩れやすい技の時です。
例えば、「逆胴」や「突き」といった技がこの項目の対象となりやすいです。「いい音やタイミングで打突しているけれど旗があがらない」という経験が皆さんあるのではないでしょうか?おそらく、「適正な姿勢」が問題です。
③竹刀の打突部
竹刀の打突部とは、いわゆる「物打ち」付近のことです。竹刀の先革の部分や鍔に近い部分で打突した場合は有効打突とはなりません。
④打突部位
打突部位は、「面部」「小手部」「胴部」「突部」です。しかし、正しく理解するにはもう少し知識が必要です。「面部」は「正面」と「左右面」に分かれます。「左右面」とは、「正面」より横の、こめかみ以上を指します。
「小手部」は中段の「右小手」、中段以外の「左右小手」を指し、いわゆる「小手ぶとん部」が打突部位となります(※中段でも左手前の場合は左小手が打突部位です)。
「胴部」は「右胴」と「左胴」です。「面部」もそうですが、どこを打っても音がすれば有効打突というわけではありません。「面部」のこめかみより下、「胴部」の正面を打っても有効打突ではありません。
「突部」は「突き垂」が打突部位です。
いかがでしょう。「打突部位」は判定のキモだと思っていて、正しく理解していない審判・子どもたちも多いです。少年剣道や中学高校で指導している方は、一度生徒さんに尋ねてみると良いかもしれません。
正しく知って、正しく見極めましょう。
⑤刃筋正しく
佳境に入ってきました。
「刃筋正しく」とは、竹刀の「刃部」で打突するということです。「刃部」とは「弦」の反対側を指します。先ほど、竹刀の「打突部」の項で書きませんでしたが、「打突部」は正確には「物打ちを中心とした刃部」ということになります。竹刀は日本刀の代用品ですので、当然と言えば当然です。
「刃筋」を特によく見極めなければならない技は、「胴打ち」や「返し面」や「引き面」です。いわゆる「平打ち」(鎬で打つこと)になっていないかよく確認する必要があります。特に、中学生高校生年代は、「返し面」「引き面」をあえて「平打ち」で打とうとする選手が多いので要注意です。
⑥残心
「残心」とは、「打突後の身構えと心構え」のことであり、打突で判定が終わるのではなく、「残心」まで見極めてから有効打突の判定を下さなければなりません。
気を付けるべきは、出頭の技などで、「打った瞬間の残心」というものがあるということです。そのような場合は、打突後の目に見えるような「残心」がなかったとしても、有効打突となり得ます。
また、よく「残心がなかったら有効打突が取り消される」という言い方がありますが、それは間違いです。先ほども述べた通り、有効打突は「残心」を見極めてから判定するものであり、「残心」がなかったから取り消したなどということは絶対にあってはなりません。
有効打突の取り消しは、「不適切な行為」があった場合のみ適応されます。必要以上に一本取ったことをアピールしたり、ガッツポーズをしたりする場合です。合議をかけて、取り消しをします。
以上で、有効打突の条件の理解は終わりです。文字で書けばたった2行で済むものですが、正しく理解するには今挙げた注意事項をしっかりと頭に入れておかなければなりません。
審判の技能を上達させるトレーニング方法がありますので、最後に紹介します。
それは、審判をしながら、「有効打突に近い技だが、旗を上げなかった技」に対して、有効打突の条件に照らして具体的に「どこが」足りなかったのかという「答え」を自分なりに持つということです。「ちょっと浅いな」とか「少し軽いな」ではなく、「打突部」や「打突部位」、「打突の強度」(※この記事では初めて出てきましたが、有効打突の要素にこういったものがあります)など正しい文言で的確に不足のある所を指摘する癖をつけるのです。
剣道経験者であれば、完璧な(完璧に近い)有効打突の見極めは、割と簡単にできるものです。ですから、完璧な技はあまり気にせず、「むむむっ」と考えさせられるような技に焦点をあててトレーニング材料とするわけです。
そうすることによって、もしも、人に判定の理由を尋ねられたとしても、堂々と返答ができますし、聞く方も納得することができると思います。オススメのトレーニング法ですので、是非実践してみてください。
まとめ
今回は、
「剣道の審判で有効打突を正しく判定する方法」
について解説していきました。
ポイントは、①正しい位置取り、②有効打突の条件を理解する
です。位置取りや有効打突の条件のデティールについては、剣道講習会などに参加しなければあまり教えてもらう機会はないのではないかと思います。そう言った意味で今回の記事は有料級に有益なのではないかと自負しております。
また、以前の記事剣道で不信感を抱かれる審判とは? 基本中の基本!と併せてご覧になると、より審判に対する理解が深まるのではないかと思います。
「審判が良くなれば試合が良くなる、試合が良くなれば剣道が良くなる」
恩師の言葉です。
剣道界がより良くなりますように。剣道がますます発展しますように。願いを込めた審判講習シリーズでした。
それでは。
剣道具職人のいる店 剣道防具工房「源」
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