こんにちは。
私は剣道ブロガーのKENDO KAWANOと申します。
脱サラして剣道ブロガー兼YouTuber(現在準備中)に転身しました。
詳しくはプロフィールをご覧ください。
今回は、
「意外とツライ剣道の審判」
について、取り上げていきます。
剣道具職人のいる店 剣道防具工房「源」
意外とツライ剣道の審判
全日本剣道連盟の剣道試合審判規則細則の第1条にはこうあります。
この規則は、全日本剣道連盟の剣道試合につき、剣の理法を全うしつつ、公明正大に試合をし、適正公平に審判することを目的とする。
あまりにも有名な一文です。
剣道の審判は、「適正公平に審判する」となっており、「適正公平」とは、いうまでもなく「適正に公平に」という意味であり、剣道の審判をするにあたっての大前提としてこの第1条が定められているわけです。
「適正に公平に」???当たり前じゃないか。と思われるかもしれません。
正直に言って、実はこれほど難しいものはないのです。理屈ではみんな分かっているでしょうし、私心を持たずに審判をすると心に誓っていると思います。ただし、日本中の剣道の審判員がいついかなる時もそれを実行できているかは甚だ疑問です。
今回の記事では、適正公平に審判することが難しい理由を解説しつつ、「審判のツラさ」について解説していきます。
ポイントは以下の2点です。
・先入観が審判を惑わす
・プレッシャーをかけられる審判
順に解説します。
先入観が審判を惑わす
剣道の審判をするときに、どうしても頭に入ってくる情報があります。それは出場する選手のチーム名と名前です。剣道の場合、試合会場の掲示板やホワイトボードに必ず所属チーム名と個人の名前が掲示されますし、何より剣道着や袴・垂れ名札にしっかりと記名されています。我々が審判をするときには、いやでもこれらの情報が飛び込んでくるということになります。
そしてこれが審判をするにあたっての障害となりかねないのです。
パターン別に解説します。
①知り合いのチームのパターン
まず一つ目に障害となりえるのが、「知り合いのチーム」のパターンです。高校剣道で例を挙げてみます。
自分が九州のある県の高校指導者と仮定し九州大会で審判をすることになったとします。九州大会では、自分の在住する県の選手(もちろん自分の学校の生徒は除く)の審判をすることになる場合があります。この場合やはり他県の選手と自県の選手ではどうしても色眼鏡で見てしまいたくなる気持ちがどこかに発生します。もちろん、「公平に公平に」と自分に言い聞かせながら審判に臨むわけですが、普段はライバルである自県の選手だからこそ、その選手の特徴や得意技などをつぶさに知っているわけです。打ちそうなポイントも得意なパターンも知り尽くしているしかも自分の県の選手対知らない他県選手となると、審判の立場としてはなかなか難しい立ち振る舞いになってくることは自明の理だと思います。
このように、「知り合いのチーム」の選手を審判するということは大変難しいものです。もちろん「知り合いが勝ったら自分にいいことがある」などの利害関係などがなくてもです。やはり人間の情というものと、技や動きをよく知った選手であるという点から適正公平に審判することが難しい状況が発生します。
②有名なチームのパターン
ザ・先入観のパターンです。剣道でも毎年のように全国大会で優勝や上位入賞するチームがありますよね。そこまでではなくても、各都道府県を代表するチームでもいいのですが、要するに「有名=強いチーム」の審判をすることは正直に言ってツライです。
ただし、有名なチームは強いから有名なわけであって、基本的には順当に勝つパターンが多いのも事実です。そういった意味では簡単な審判に思われるかもしれませんが、そうでない状況もあるのです。
強いチームの選手はたまに過信するのか、あまりにも相手にとって分かりやす過ぎるおおざっぱな攻撃を仕掛けることがあります。そうすると実力が劣るであろう相手にでもうまく打たれるような現象が発生します。この時の審判が実は非常に難しいのです。頭の中のどこかで「○○が(強いチーム)勝つだろう」と決めてしまっていたり、「今のはまぐれで当たっただけじゃないのか」と相手選手の打突に対して否定的な判断をしてしまったりすると、有効打突の条件に照らして不足がないにも関わらず旗を上げられなくなってしまうことがあります。まさに先入観のなせる技です。
また、強いチーム同士の試合においても同じような現象は見られます。例えば毎年その大会で優勝しているチームと、ベスト8や3位などの入賞常連チームの試合においても、やはり「最後は○○(毎年優勝するチーム)が勝つだろう」とどこかで思ってしまう場合があります。慣性の法則というのでしょうか。人間は変化を恐れる生き物のようで、なるべく変わらないこと(無難なこと)を無意識に願っているのかもしれません。
もちろん審判員である我々は、そういった私心を捨て「適正公平」と呪文のように自分に言い聞かせるべきだし、実際にそう思ってはいるのですが、、、という話です。そういった意味で、「有名なチーム」の審判をすることは非常にツライです。
プレッシャーをかけられる審判
審判員が戦わなければならないのは、自分の中の先入観だけではありません。敵は外にもいます。
剣道の試合では試合中に監督からの指示を仰ぐことは禁じられていますし、監督からも指示をや指導をすることはできません。しかしながら、現実には監督は選手を勝たせたいという思い、選手は信頼する監督の指示を仰ぎたいという思いによって声やその他の方法で指示を出してしまっているケースは、特に学生年代以下の試合で見られる光景です。実際に私もついついそのような行為を行ってしまうことはあると正直に認めたいと思います。
しかし問題はその先です。生徒に指示や指導することは褒められたことではありませんが、気持ちはわかるように思います(それを是としているわけではありません。私も今後気を付けていきたいと思っています)。しかしそれがエスカレートしていくと、あろうことか審判員の判定に対して影響を与えるような言動につながっていく場合があります。
正直に述べますが、私が過去見てきた中では「審判の判定に不満がありそれを声に出して訴える人」や「相手の反則行為(例えば1本選手されている状況での時間空費など)を指摘するかのように生徒も参加させて拍手や声などでアピールする人」など様々な無法者を知っています。ひどい場合には試合場外においても聞えよがしに標的の審判に対して悪態をついたり、周りの先生方に悪評を吹聴したりという残念な行為を目撃したこともあります。
それぞれのチームがそれぞれの目標に向かって必死でやっているわけであって、その想いの強さからくる上記の態度だということは十分わかっているところですが、審判員の立場からすればこれらの行為は審判においての障害以外の何ものでもありません。
まして、審判員よりも試合をしているチームの監督が段位が上だったり、年齢が上だったりする場合は、やりにくいということでは済まされない問題だと感じます。
そしてこれらの行為は、残念ながら強ければ強いチームほどそういった傾向にあるという感覚があります(強いチームでも規則を遵守した監督さんもたくさんおられます)。例えばその都道府県でトップのチームだったり、全国でトップのチームだったりというチームの監督さんからそのような態度を取られたら、審判は平常心で、つまり適正公平に審判するということが極めて難しくなるでしょう。
審判員はこういったプレッシャーの中で審判をしなければならない場合もあるのです。私の場合も1試合の審判が終わった後、嫌な汗と強烈な脱力感に襲われたことが幾度となく思い出されます。
こういった点が剣道の審判員の最大のツラさです。
まとめ
今回は、
「意外とツライ剣道の審判【本音】」
について解説しました。
ポイントは、「先入観が審判を惑わす」「プレッシャーをかけられる審判」となります。
今回の記事は少し監督批判のようになってしまった部分がありますが、自分への戒めとしても書かせてもらいました。ただ、まずは審判員自身が適正な審判ができる素地を身につけるということが実は一番大切です。そのためには審判員としての経験を積むということと、講習会を受講するということ、ルールを熟知するということが必要です。判定が一人だけ極端におかしかったり、ルールを理解しておらず不適格な行動をしてしまったりすれば、試合者や監督者からすれば不信感が湧いてくることも当然です。試合者や監督者に有無を言わせない審判をできる素地をしっかりと身につければ、必然的にこの記事で書いたような問題点も少なくなってくることでしょう。稽古も審判も地道に努力を続けていきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。次回もお楽しみに。
それでは。
剣道具職人のいる店 剣道防具工房「源」
コメント